お墓参りや供養のあり方は、ここ数年で大きく変化し始めています。特に注目されているのが、デジタル技術を活用した新しい供養の形。オンライン参拝やオンライン法要、VR・ARを使った霊園見学、QRコードによる墓所管理など、これまでにはなかったサービスや取り組みが増えつつあります。
背景には、遠方に住む家族の増加や高齢化、そしてコロナ禍で一気に広がったオンライン文化があります。「行きたいけれど行けない」「家族みんなで集まれない」——そんな状況でも、気持ちを届け合える手段として、デジタル技術が供養の世界に広がり始めているのです。
本コラムでは、今注目される“霊園×デジタル”の最新トレンドと、都立霊園でも活用できるヒントをご紹介します。
1. なぜ今、霊園にデジタルが求められているのか
霊園にデジタルが求められる理由は、単に“便利だから”だけではありません。社会構造や価値観の変化が大きく影響しています。
● 遠方に住む家族が増えている
子どもが地方や海外で生活するケースは珍しくなくなりました。年に数回しか会えない家族にとって「行きたいのに行けない」お墓参りは大きな課題でした。
● 高齢化で移動が困難になる世帯が多い
足腰が弱くなり、お参りが負担になるご家族も増えています。それでも「心だけは寄り添いたい」と願う人は少なくありません。
● コロナ禍でオンライン文化が定着
オンライン会議・オンライン授業・オンライン帰省など、“画面越しのつながり”が当たり前になったことで、「供養もオンラインで」という考え方が自然に受け入れられるようになりました。
これらの背景により、デジタルを活用した供養が「ご家族の心を支える新しい選択肢」として注目されているのです。
2. オンライン参拝・オンライン法要という新しい供養の形
オンライン参拝は、スマートフォンやパソコンを通じて、現地の様子をリアルタイムで確認しながら手を合わせる仕組みです。同様にオンライン法要は、住職が読経を行い、それを家族が自宅から視聴する形式です。
● “同じ時間に手を合わせられる” という安心
家族が離れて暮らしていても、同じ時間に故人を想い、一緒に祈ることができます。
「距離は離れていても心は一緒」
という体験ができるのが最大の魅力です。
● 実際に提供されているサービスも増加
都内の一部寺院ではすでにオンライン法要が一般化し、民間霊園でも専用カメラを設置してオンライン参拝が可能なところがあります。
● 都立霊園でも応用できる考え方
都立霊園は公営であるため独自の演出サービスは行いませんが、
「現地で撮影した写真を家族に共有する」
「離れて住む家族とビデオ通話をつないで参拝する」
など、利用者自身の工夫で“オンライン参拝風”の供養はすでに可能です。
3. VR・ARで変わる霊園体験
インターネットの普及とともに、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を利用した霊園サービスも登場し始めています。
● VRで霊園内見や区画案内
遠方でなかなか見に行けない人に向けて、360度カメラで撮影した映像を使い、
「その場にいるような感覚で霊園内を歩く」
という体験が可能です。区画選びの参考になるため、これから広がることが期待されています。
● ARで墓石に情報を紐づける未来
スマートフォンをかざすと、
- 故人の思い出写真
- 家族からのメッセージ
- お参り履歴
などが表示される、AR墓石サービスも登場しつつあります。
物理的な墓石に“デジタルの思い出”が重なることで、家族の記録がより深く残る時代が近づいています。
4. スマート霊園が広げる可能性
デジタル化は供養だけでなく、霊園管理にも広がっています。
● QRコードによる墓所情報管理
墓石に小さなQRコードを付け、掃除・点検・管理履歴などを記録できる仕組みです。
利用者にとっても
「今どんな状態なのか」が一目でわかるメリットがあります。
● 利用者と管理者双方の負担軽減
- 墓所の位置を正確に把握できる
- 書類管理がスムーズになる
- 遠方からでも情報確認できる
といった利点があり、長期的には安定した運営にもつながります。
都立霊園でも、将来的に同様のデジタル管理が導入されれば、より利便性が高まる可能性があります。
5. デジタル化が家族に与える安心
供養のデジタル化は、「便利になる」という側面だけでなく、家族の心の支えになるという大切な役割があります。
● 記録が残る安心
お参りの様子を写真・動画に残し、家族で共有することで、“つながり”がより実感できます。
● 体験を家族で分かち合える
帰省が難しいご高齢の親御さんでも、スマホ越しにお墓を見ることで「ちゃんとお参りできている」という安心感が得られます。
まとめ:デジタルとリアルが共存する“未来のお墓参り”
オンライン参拝やVR霊園の登場により、供養のスタイルは新たな段階に進みつつあります。
とはいえ、デジタル化は“リアルなお墓参りをなくす”ものではなく、
「行けないときの代替」
「家族をつなぐための補助」
として共存していくものです。
都立霊園でも、利用者の工夫次第でデジタルの力を十分に取り入れることができます。
これからの霊園選びにおいて、
「アクセス」「費用」「区画」
に加えて、
“デジタルとの相性”
も大切な視点となっていくでしょう。
時代に合わせて進化する“新しい供養の形”。
未来のお墓参りは、もっと柔軟で、もっと家族思いのスタイルへ広がっていきます。

